インタビュー

新校長が語る「上海日本人学校高等部」

 2011年4月にスタートした日本人学校高等部が設立3年目となり、いよいよ3学年がそろう初めての年になりました。世界初の試みである日本人学校高等部に対して大学受験という教育の成果が期待されるなか、どのような体制で今年度を迎えているのでしょうか。 重要な年度に新しく校長に就任された水野俊夫校長に、その意気込みや現状について詳しく伺いました!

■新校長の語る「日本人学校高等部」

jp5記者:水野校長の経歴をお聞かせください。

水野:KDD(現KDDI)研究所から国際機関の上級技術者としてアメリカに5年、イギリスでベンチャー企業のディレクターを5年、その後三菱電機シアトル事務所長を5年間務めました。日本に帰国後、芝浦工業大学で教授となり、マレーシアのセランゴール州立大学で、現地のマレーシア人学生が日本の大学へ3年次編入するためのエンジニア教育に6年間携わっていました。

記者:高等部設立3年目、初めて卒業生を送り出す年度に校長に就任されました。どのような意気込みや目標をお持ちですか。

水野:一番大きな仕事は「入口」と「出口」で成果を出すことです。「入口」というのは入学、「出口」は卒業です。「入口」に関することでは特に、情報提供ですね。日本人学校の高等部というのは世界初の試みで、まだ知名度はそれほど高くありません。高等部にはどのような教育理念があり、その理念に基づいて実際にどのような教育が行われているかを外に向かって分かりやすくPRして知ってもらい、そして生徒数も増やしていく必要があります。具体的な数値としては1学年あたり70人が目標です。また「出口」という点では、今年度初めて受験を経て教育の成果が評価されるわけですから、大学受験はひとつの通過点ではありますが、生徒ひとりひとりに適した大学へ進学させることが使命です。

記者:高等部の生徒の印象はどうですか。

水野:日本の高校生と比べると、純朴で真面目な印象を受けました。例えば今の2年生は生徒数が50人で2クラス編成、担任と副担任の計4人でこの50名の生徒を見るわけですから、先生の目がしっかり行き届いています。先生と生徒の距離が近く、生徒指導がしやすい環境だからだと思います。

記者:そういった純粋で真面目な生徒たちを「独歩博愛」の校訓のように他の人を思いやりながらも自分の意見を主張出来るよう指導されるのでしょうか。

水野:その通りです。私自身長い海外生活で日本人のよいところをたくさん見てきましたが、良くないところも目にする機会がありました。良くない例では、的確な目的や目標を持ち、良いアイデアを持っていてもコミュニケーションの能力が欠けていてうまく答えることが出来ないことですとか、苦笑いでお茶を濁してしまうとかですね。当校の生徒たちにはそのような人間になってほしくない。海外に来ているわけですから、ある意味で恵まれた環境のなかで生活していると言えます。そのなかで英語と中国語の語学能力と自分の考えを論理的に発表出来る力を身につけて、国際社会において他人を思いやりながら自分の存在感を示すことが出来る人間になってもらいたいと思っています。

■上海日本人学校からの大学入試

記者:上海日本人学校高等部には様々な目的を持った生徒がいて、学力レベルも差があると思いますが、学校としての方針と生徒のやりたいことのバランスをどのようにとられていますか。

水野:まずは生徒一人一人の目的と目標をはっきりさせることです。例えばエンジニアになりたいとか芸術家になりたいというのが人生の目的で一生求めていくものです。それをはっきりさせた後で目的を達成するためにはどうすればいいかということを考えて学年毎のステップ、つまり目標を生徒と一緒に定めていく。具体的な各学年の目標項目は大学入試と人間形成ですね。その目標を我々教員側がひとつひとつちゃんと生徒に確立させて、生徒を動機付けしていくこと事が大切だと思っています。

記者:高等部がスタートして3年目、初めての大学受験を迎えます。彼らには受験を経験した先輩もいないわけですし、高等部教育の環境もようやく整い始めたばかりというなかで結果を求められるという点についてはどうでしょうか。

jp3水野:まさに今年は結果が求められる年ですね。こちらには入試のプロと言えるベテラン教員がいますので、設備的なハンディキャップが全く問題にならない指導を行っている自信があります。

記者:日本の受験のイメージとして、予備校や塾などの学校以外の学習環境が整っているイメージがありますが、上海ではその役割も高等部が担っているのでしょうか。

水野:もちろん塾に通っている生徒もいるようですが、放課後に学校に残って自習をしている生徒も多いですね。それから、土曜日に学校に来て勉強をしている生徒が受験生だけでなく、1年生でも三分の一ほどいます。土曜日には教員も普段の約半数は来るようにしていますし、土曜日補習も行っています。このように、高等部がある意味、通常の授業以外の学習環境を提供しているといえます。

記者:授業体系としてはどのようなかたちで教えているのでしょうか。

水野:レベル分けをして少人数で指導しています。例えば数学は1クラスを2つのクラスに展開します。英語では1つのクラスを3クラスに分けて教えています。さらに中国語の授業は1学年を4つのクラスに細分化。いずれの場合も1クラスが7~14人におさまるようなクラス設定となっています。設備面との兼ね合いがありますが、教室がもっと使えるならレベル分けを細かくして個々の生徒のレベルにあわせた指導を徹底させていきたいと思っています。

■保護者から見る日本人学校高等部

記者:中学生を子供に持つ保護者の方に、日本人学校高等部に対する印象と要望をアンケート調査しました。高等部に対する印象で一番多かったのが「情報が少ない」というものです。入ってくる情報も口コミやうわさ話に頼ってしまうという点でした。もう一点は子供の進路です。日本人学校高等部に自分の子供を進学させたとしてその進路がどうなるか、皆さん注目されているようです。

水野:情報不足という点では保護者の方への説明会や、本年6月に予定されている商工クラブの方への説明会、情報誌や受験雑誌、ホームページなど、PRして知ってもらう努力をしていくしかありません。それから保護者の方が進学先を決定されるに際し、注目される基準は大きく分けて3つあるように思います。「進学実績」、「学校の環境」、それから「教育の中身」ですね。今年度が初めての受験ですので進学実績は今のところありませんし、正直に言って学校の設備も整ったとはいえまだ充実を図っている段階です。残された教育の中身という点で勝負をしたいと思います。生徒の成績の追跡調査でも明らかですが、学年が進む毎に学力が大きく向上している事が確認されており、勉強の成果は着実に出ています。また、いろいろな外部での行事に参加した生徒たちに対して、彼らの行動の規律遵守の態度には、大きな感動を外部の方々に与えています。

記者:日本人学校という名前を聞いて、私なら全ての日本人学生を保護し、入学させて教育を受けさせるというイメージを持ってしまうのですが、義務教育ではない高校教育である以上生徒を線引きしなければならないのでしょうか。

水野:その問題はいつも課題としてあがります。学力の最低レベルの基準を設けずに誰でも入学できるようにすると学校全体のレベルが下がってしまいます。また「生徒の質」が高等学校に入学させる際に、保護者の方が重視している項目の上位にいつもランキングされている現状があります。学生数が増えることは嬉しいことですが、学力の差があまりにも大きく開いてしまうと、レベル分けの数が増えて現状の教室数では対応することが出来なくなってきます。やはり高校教育ですから、学力の最低レベルの線引きをせざるを得ないのが現状です。ただ現在日本人学校の将来構想について議論が始まっており、その中で高等部としてのあるべき将来図も議題に上がっており、全入制も議論されることになると思っています。

記者:それから、保護者の方の意見で多かったのが、高等部の具体的な偏差値と授業のレベルでした。

jp6水野:中学校通知票の平均値の目安は、入学試験の時に公開します。授業のレベルに関してですが、教科書は一流大学を目指した程度の高い教科書を使用して「伸びたい生徒」を「伸ばせる教員」が指導していますので、進学実績を持つ他校と同等もしくはそれ以上の質の高い授業を提供しています。そして授業の成果を説明しながら、生徒一人一人の成績が日本国内の大学入試でどのレベルに相当するのか、という点についても保護者面談等で話したいと思っています。

記者:上海日本人学校高等部の協力大学が計12大学あるとうかがっています。具体的に推薦枠はどの程度なのでしょうか。

水野:推薦枠は協力大学会議で決定する事項ではありますが、高等部の生徒の多くが応募できるような推薦枠の数を確保してもらっています。ただ、推薦枠の数というより、高等部の生徒ひとりひとりにふさわしい大学と専門コースを選んで、その結果が推薦枠にマッチしたという形にしたいと考えています。「まず推薦枠ありき」という前提での進路指導はあまり好ましいとはいえません。学生の目標がどこにあるのか、どの大学のどの学部で何を学ぶのか、それを明確化させながら進路を一緒に探していくことが重要だと思います。

記者:それでは、最後に意気込みを聞かせてください。

水野:『乾坤一擲の戦い』の心境です。今年は勝負の年。学生の進学成果と入学定員の確保という具体的な結果が求められますので、高等部の教職員と生徒が一丸となってその期待に応えたいと思います。

(2013年5月 日本人学校高等部にて)

         

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